東北大学の大規模研究を読んでみました
「絵本の読み聞かせは子どもに良い」とよく言われます。
ただ、それが経験則なのか、科学的に検証された事実なのかは気になるところです。
2026年1月、東北大学の研究グループが、幼児期の読み聞かせと発達との関連を大規模データで解析した論文を発表しました。今回はその内容を、少し噛み砕きながらまとめます。
論文タイトル: Impact of shared storybook reading on child development: The Japan Environment and Children’s Study
掲載誌: Pediatric Research
3万人超のデータで検証
今回使われたのは、環境省が実施している全国規模の出生コホート「エコチル調査」のデータです。
対象は 36,866組の母子ペア。これだけのサンプル数があると、偶然によるばらつきの影響はかなり抑えられます。
3歳時点での発達は、国際的に広く用いられている ASQ-3(Ages and Stages Questionnaires, Third Edition) で評価されました。評価領域は、
粗大運動
微細運動
コミュニケーション
問題解決
個人・社会性
の5つ。言語だけでなく、運動や社会性まで含めた包括的な指標です。
読み聞かせは、親の学歴や収入とは関係なく効果あり
結論をシンプルに言うと、読み聞かせの頻度が高いほど、発達スコアは高い傾向があった という結果でした。
しかもこの関連は、親の学歴や世帯収入、家庭での遊び時間、スクリーンタイムなどを統計的に調整した後でも維持されていました。
特に強く関連していたのは「コミュニケーション領域」です。
これは直感的にも理解しやすい部分で、語彙入力や親子のやり取りが増えることが影響している可能性があります。
発達がゆっくりな子どもでも有効
興味深いのは、1歳時点で発達スコアが低めだった子どもの解析です。
この群でも、高頻度の読み聞かせが行われていた場合、3歳時点でのスコア改善と関連が認められました。
もちろん観察研究なので因果関係を断定はできません。しかし、発達の成長に何らかの影響を与えている可能性は十分に考えられます。
読み聞かせが有効なメカニズム
論文ではメカニズムを断定してはいませんが、理論的には次のような説明が考えられます。
共同注意(親子が同じ対象に注意を向ける経験)の増加
双方向的な言語刺激
語彙入力量の増大
情動調整や社会性の基盤形成
読み聞かせは単なる音読ではなく、対話的な相互作用です。その積み重ねが、複数の発達領域と関連している可能性があります。
考えたこと
一方で東北大のプレスリリースには、
「読み聞かせの頻度が高い家庭では、子どもおよび親のスクリーンタイム(スマホやテレビの試聴時間)が短い傾向を確認しました。」
とありました。
スクリーンタイムで調整した群間比較がなかったようなので、今回の研究は単にスクリーンタイムが短いから発達に好影響したのでは、とも解釈できると考えました。そこで、同程度のスクリーンタイムの群での読み聞かせ効果の比較データが存在するかAIに聞いてみました。
1) Screen Time at Age 1 Year and Communication and Problem-Solving Developmental Delay at 2 and 4 Years
JAMA Pediatrics (2023)
📄 Abstract(要旨)
本研究は、日本の出生コホートを用いて、1歳時点のスクリーンタイムと2歳・4歳時の発達遅延との関連を検討した。ASQ-3(発達スクリーニング尺度)の5つの領域(コミュニケーション、粗大運動、微細運動、問題解決、個人・社会性)を評価した。スクリーンタイムを4段階(<1時間/日、1〜<2、2〜<4、≥4)に分類し、発達遅延リスクとの関連を調べた。結果として、高いスクリーンタイムはコミュニケーションと問題解決領域における発達遅延と有意に関連していた。特に1日4時間以上のスクリーンタイムは、コミュニケーションや問題解決の遅延リスクを高めていた。
2) Screen Time and Developmental Performance Among Children at 1-3 Years of Age in the Japan Environment and Children’s Study
JAMA Pediatrics (2023)
📄 Abstract(要旨)要約
本研究は、日本の全国出生コホート「The Japan Environment and Children’s Study」を用いて、1〜3歳児におけるテレビ/DVDスクリーンタイムと発達スクリーニング(ASQ-3)との関連を検討した。ランダム切片モデルおよびクロスラグパネルモデルを用いて、スクリーンタイムの増加とその後の発達スコアの変化を評価した。解析の結果、スクリーンタイムが増加するほど、その後の発達スコアが低くなる傾向が観察された。また、逆方向の関連(発達スコアが低い場合にスクリーンタイムが増える)も一部認められた。
3) Association Between Screen Time and Children’s Performance on a Developmental Screening Test
JAMA Pediatrics (2015)
📄 Abstract(要旨)
この米国の前向きコホート研究は、24、36、60か月時の子どものスクリーンタイム(総時間/週)と、母親報告によるASQ-3の発達結果との関連を解析した。ランダムインターセプト・クロスラグパネルモデルを用いた解析によって、24および36か月時の高いスクリーンタイムは、後続の発達スコア低下と統計的に関連した。これらの関連は、集団内の変動を統制することにより評価されている。
スクリーンタイムと発達の遅れに相関がありそう
どうやらスクリーンタイムと発達の遅れには相関関係があるようです。しかも用量依存で相関があるとなると、スクリーンタイムの影響は大きいと思われます。とはいえ、個人的にはスクリーンタイムをゼロにする必要はないと思います。大人であってもお菓子は体に良くはないけど、適量をとるほうが幸せだと思いますし、取り過ぎないように気を付けるというゆるい考え方が大切なのでは、と考えます。我が家でも子供のスクリーンタイムは抑えていますが、禁止してはいません。親は子供の前でスマホを開かないようにしているだけです。次回は、我が家の読み聞かせについて書いてみたいと思います。

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